
旧店舗
私たち「かついえおやき店」は、東筑摩郡生坂村で灰焼きおやきを焼き続けてきました。囲炉裏の灰の中でじっくり火を入れるこのおやきは、素朴ですが、村の風土そのものの味だと私は思っています。先代から受け継いだ手仕事を守りながら、どうすればこの味を次の世代へ残せるのか――それが長年の課題でした。
近年は村外からのお客様も増えましたが、「買って帰るだけ」で終わってしまうのがもったいないと感じていました。灰の香り、焼き上がる時間、囲炉裏のぬくもり。そうした空気ごと味わっていただく場所をつくりたい。その思いから、令和8年3月に、イートインスペースを備えた新店舗を開く決断をしました。ここでは焼きたてをその場で食べ、ゆっくり過ごしていただけます。観光地ではなく“暮らしの延長にある店”として、生坂村を感じてもらえる場所にしたいのです。
また、私自身の役目は「続けること」から「託すこと」へと変わり始めています。後継者として嫁が加わり、家族で店を守っていける形が見えてきました。味は教えるものではなく、一緒に焼く中で身につくもの。失敗も経験も共有しながら、私の手の記憶を次世代へ渡していきたいと思っています。

旧店舗の前で(左)店主、(右)後継者
生坂村商工会の皆さんには資金計画、経営計画の段階から支えていただき、販路の拡大やSNSを利用した情報発信にもこれから挑戦していきます。ただ売上を伸ばすことが目的ではありません。おやきを通して村に人が訪れ、誰かが「また来たい」と思ってくれること。それが小さな活性化につながると信じています。
灰焼きおやきは派手な食べ物ではありません。でも、だからこそ飽きず、暮らしに寄り添ってきました。これからも変わらない味を守りながら、時代に合わせて伝え方を変えていく。新店舗は、その第一歩です。私はこれからも火を絶やさず、家族と地域とともに、この味を未来へつないでいきます。