ONE POINT ADVICE

法律ワンポイントアドバイス

再びコンプライアンスについて

弁護士

宮澤 建治 氏

1 コンプライアンス(Compliance)という英語は、一般的に「法令等を遵守して業務を行うこと」と訳されていますが、私は「商工連ながの」の平成23年(2011年)11月号の「法律ワンポイントアドバイス」誌上で、コンプライアンスの正確な意味は、法律、政・省令、条例などの実体法を守ることのほか、企業(個人・団体を含む)の社会的責任(CSR)を自覚し、社会的責任を果たしていく積極性を持ち、この企業経営者の認識と意欲を従業員の意識に浸透させ、企業内に組織体制を確立していくことであると考えるべきである旨を申し上げましたが、この時から13年余を経た今日、世界や我が国をリードする大企業を始め中小企業に至るまで、様々な不祥事が続発し、留まるところを知らない有様であり、国民の倫理観の低下さえもが危惧される状態となっていると言わざるを得ず、コンプライアンスはお題目の如き感さえする程です。

2 このような現状を改善するためには、企業の経営者や幹部がコンプライアンスの意味・内容を十分に理解し、自己の企業がどのような社会的責任を担い、如何なる責任を果たしていくべきかを認識することが最も重要であり、次には企業の従業員に対してコンプライアンスの意味・内容を理解させ、従業員一人一人が所属企業の社会的責任を自覚して日常業務に従事するよう指導し、研修を実施することが必要であり、次いでは、企業にコンプライアンス違反がないかをチェックする体制を作ってコンプライアンス違反の発生を極力抑止するよう努めるべきであり、更にはコンプライアンス違反が発生した場合に迅速且つ適正な対応をすることが重要だと思います。そして、これらの対応についての具体的な組織・体制(ガバナンス)としては、従業員のコンプライアンス意識を啓発したり、現実に発生したコンプライアンス違反事案につき従業員が告知、相談、対応を求めることの出来る窓口又は対策室などを設け、従業員が安心して相談し、助言や指導を受け易い人材を配置することが望ましく、社内事情や人事に精通した人柄の良い定年退職者などをコンプライアンス対策の人材として活用することも有用であり、商工会の経営指導員、社会保険労務士や弁護士などの専門家の助言や援助を求めることも又重要です。

3 以下に重要なコンプライアンス違反について例示を致しますので、参考にして下さい。

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