支援テーマ
支援者
商工連 | 上席専門経営支援員 佐藤 弘一 |
商工会 | 高森町商工会 主任経営支援員 勝野 鷹矢 |
企業概要
事業所名 | 北部タクシー有限会社 |
代表者(相談者)氏名 | 村澤 文彦 |
所在地 | 長野県下伊那郡高森町下市田2937 |
業種 | 旅客運送業 |
事業内容 | タクシー、乗合バス運行等 |
従業員数 | 44名 |
創業(設立年月) | 1954年3月(法人設立) |
支援の内容
■企業の現状・課題及び支援の経緯
当事業者は昭和5年より続く町内唯一のタクシー会社であり、その高い接客技術は、町内はもとより町外の顧客からも高く評価されている。現在はタクシーの他、町内の乗り合いバス運行や民間患者の搬送等を担い、地域の交通インフラを支えている。
【課題】
新型コロナウイルスの感染症5類移行以後、需要は徐々に回復してきていたが、運送業者への働き方改革適用(2024年問題)を目前に控え、タクシーの運行管理者や乗務員の時間外労働の削減と有給休暇取得率の向上が課題となっていた。
【支援の経緯】
経営者との話し合いの中で、業務プロセス内での時間外労働要因の洗い出しを行った。洗い出しの結果、業務プロセスの中で問題となっており、設備導入により解決が図れそうな工程は就業後の乗務員の健康状態等を確認する点呼業務と退勤前の車両清掃である事が分かった。そこで、働き方改革推進支援助成金の活用による設備導入を提案、支援を開始した。
■支援内容
現在の就業規則及び36協定の締結内容と現状の従業員の勤務状況を確認し、現状に即した就業規則への改訂を支援した。また取組む成果目標について、経営者と検討を行い、申請書の作成支援を実施した。交付決定後、助成事業の進捗に注視しつつ、実績報告に向けての経理書類整備、成果目標達成のための36協定締結、実績報告書の作成支援を実施した。
■支援結果及び今後の展開等
働き方改革推進支援助成金の交付決定を受け、乗務員の乗務終了時の点呼業務を自働化できる「ロボット点呼」の導入及び車両清掃を効率化する車両マット洗浄機の増設を行った。
ロボット点呼の活用により、点呼業務の時間短縮(10分×12人、計120分→5分×12人、計60分)に加え、運行管理者が電話受付と配車業務に専念できるようになった。また車両マット洗浄機を増設したことで、乗務員の退勤前の車両清掃作業がスムーズになった。上記の取組みから時間外労働の削減が図れ、2024年問題への対応を行うことが出来た。今後はコロナ禍以後の需要回復に対応し、受注拡大を図るとともに、運転免許返納した高齢者への対応や民間患者の搬送といった更なる地域の交通インフラ整備に向け注力していく。
働き方改革推進支援助成金を通じて導入した「ロボット点呼」
本助成金への申請を通じて社内でも従業員有志による労働環境改善に向けた協議会が立ち上がった。
支援を受けた企業(事業者)の声
2024年問題を控え、我々タクシー事業者は、繁忙時間帯である午前中や夜間と閑散時間帯である午後があるため、必然的に長時間労働が行われている現状があり、労働時間の短縮や勤務間のインターバルの増加は、即乗務員の賃金に直結するため、どのような解決策があるのか模索している中、商工会の紹介による主任経営支援員のアドバイスにより、方向性が見えてきました。
これにより、会社主導(管理者)ではなく、社内に働き方改革推進協議会を設置することにして、参加希望者を募ったところ、10名程の希望者がおり、社員みんなで働きやすい職場環境に興味を持っていただいていたことに驚かされました。
今回導入したロボット点呼機器は、今まで人間が行っていた対面点呼を機械が行うものであり、感情移入が無くドライではありますが、的確かつ正確な判断ができ、管理者の労力削減はもとより、乗務員の意識向上にも役立ったものと考えられます。
上席専門経営支援員、主任経営支援員の親身になったご指導により、コロナ禍によりかつてない経営基盤の弱小化や将来に対する不安にも前向きに立ち向かっていく意思が持てたことは感謝に堪えません。
上席専門経営支援員による所感・メッセージ
日本では長い間、他の先進諸国と比較して、長時間労働による労働環境が常態化し、それが齎す大きな問題も発生していました。さらにこの長時間労働は、少子化が解消されない一因でもあるという見解もあったほどです。
戦後の高度経済成長は、国全体の生活の豊かさを齎したことの紛れもない事実であり、かつて世界では、ジャバン・アズ・ナンバーワンとも言われました。
ところが、世界でも類をみない日本の少子化現象は、もはや経済面での世界的優位性は無くなり今後は、社会面並びに福祉面にも大変大きな問題を投げかけてくるでしょう。
働く人一人ひとりが、より良い将来の展望を持てるようになる、新たな社会の創造を求めていく必要があるのです。
同社は、世の中の方向性、動きに敏感であり、社長を中心に積極的に働き方改革に取り組んでいます。今後はさらに労働能率を向上させ、事業の継続と発展を探求し、日々労使共に協議を重ね
ていくために、働き方改革推進協議会を設置しました。(写真②)
働き方改革を推進すべく設備機器の導入(写真①)も行い、労使一体となりその本質を追求するために努力を重ねている会社です。このチャレンジする経営は、称賛されるものです。