ONE POINT ADVICE

経営ワンポイントアドバイス

カスタマーハラスメントについて

社会保険労士法人アンカー代表社員

山本 亨 氏

 皆さん、カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)と聞いて何を想像されますか?「顧客からの暴言や暴力など」が頭に浮かぶのではないですか?

 セクハラやパワハラが急速に世の中に広まったのに、カスハラはなぜ、法整備が遅れてきたのでしょうか? やはり、日本人の心情には、昭和を代表する演歌歌手「三波春夫」さんの「お客様は神様です」の名言が根付いていて、なかなか顧客に対して言いにくい文化だったのではないかと思います。

 厚生労働省の令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書によると過去3年間のハラスメント該当事例では、顧客からの著しい迷惑行為の割合がパワハラやセクハラを大きく引き離している状況です。

 ここに至り、ようやく厚生労働省も昨年の法改正により、カスタマーハラスメントは、以下の3つの要素をすべて満たすものと定義付けを行いました。
①顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
②社会通念上許容される範囲を超えた言動により、
③労働者の就業環境を害すること
 事業主が講ずべき次の措置についても具体的な内容が今後、示される予定ですが、企業にとっての負担はますます増えると考えられます。
① 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
②相談体制の整備・周知
③ 発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置
 また、自社の労働者が取引先等の他社の労働者に対してカスタマーハラスメントを行った場合、その取引先等の事業主が講じる事実確認等の措置の実施に関して必要な協力が求められた際は、事業主はこれに応じるよう努めるものとされていますので、カスハラを受ける側の企業だけでなく、行為者がいる側の企業にも負担が生じることになります。

 弊社の顧問先には福祉関係の企業が多いのですが、カスハラの3つの要素の文中にある「施設利用者」からのカスハラ事例を聞くことが多くあります。
 利用者からの暴力により労災申請をすることがあり、先日は殺傷事件まで発生しました。また、利用者からの暴言により、職員のメンタルヘルスに支障を来し、退職に至る事態も出てきており、ただでさえ人手不足の福祉業界にとっての痛手となっています。

出典;厚生労働省 令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書

 今後の対応ですが、一番大事なのは企業としてのカスハラに対する基本方針を定めることです。既に大手企業ではカスハラの基本方針を公表しているところがありますが、中小企業ではまだまだ出来ておりません。
 先ほどの福祉関係を例にとると、まず、基本方針を定めて、利用者との契約書の内容見直しを提案しました。具体的には今までは「職員の身体、生命」に危険が及ぶときは利用を中止すると規定していたのを「職員の心身、生命」に変更しました。小さな改善ですが、職員の安全衛生を確保し、離職を防ぐことで企業の存続にもつながります。
 新年のスタートとして、社員の皆さんと語り合いながら、カスハラに対する基本方針の作成をしてみてはいかがでしょうか?

(商工連ながの 2026.1 Vol.403 掲載)
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