ONE POINT ADVICE
法律ワンポイントアドバイスパワーハラスメント(以下、単に「パワハラ」といいます。)については、かなり以前から問題視され、研修等で学んできているにもかかわらず、実際には後を絶ちません。新聞報道されることも多いと思います。再度、パワハラについて、理解を深めて発生防止に努めて頂きたいと思います。
一 パワハラだけでなく、ハラスメント一般の発生を防止する意味は主に次のとおりであるとされています。貴重な人材である社員、従業員の
① 労働者の個人としての尊厳を不当に傷つける。場合によっては、退職に至ったり、最悪は自殺を引き起こす。
② 労働者の就業環境を悪化させ、能力の発揮を阻害する。
また、企業等の使用者側にとっても
③訴訟等に発展し場合によっては高額な賠償責任を負う。
④職場秩序や円滑な業務の遂行を阻害し、企業業績に影響を与える。
⑤社会的な評価に影響を与える。
ニ パワハラの要件と具体例
2019年5月、職場における「いじめ・嫌がらせ」を防止するための、いわゆる「パワハラ防止法(正式名称:改正労働施策総合推進法)」が成立し、2020年6月に施行されて、2022年4月には中小企業も対象になっています。
この法律におけるパワハラの要件は、次の3つに整理され、パワハラとは、この3つの要件を全て満たすものとされています。
①職場での優位性 ②業務の適正な範囲を超えること ③職場環境が害されること
具体的な行為としては、厚労省パワーハラスメント対策導入マニュアルでは次のような例があげられています。最近の統計調査(複数回答)では、次の類型の中で②の「精神的な攻撃」の事案が全体の約75%程 度を占め、以下、③人間関係からの切り離し(約20%)、④過大な要求(約17%)、⑥個の侵害(約15%)、①身体的な攻撃(約13%)、⑤過小な要求(約6%)、その他(約5%)と続いています。
①身体的な攻撃(暴行・傷害等)
② 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・酷い暴言等)
③ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視等)
④ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)
⑤ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること等)
三 前述した3要件のうち、実際の職場で最も問題となると思われるのは、業務の適正な範囲を超えているかどうかの判断です。職場の上司としては、部下に対する指導が不可欠なのですが、それが行き過ぎるとパワハラになりかねないので、注意が必要です。特に新人に対する指導、仕事ぶりがあまり芳しくない従業員に対する指導、度重なる注意にもかかわらず仕事ぶりや態度が改まらない従業員に対する指導等に悩む指導者が多いと思いますが、特に業務指導をする場合の言葉遣いには十分な注意が必要です。
正当な業務行為(指導)であれば違法ではないのですが、正当な業務行為かどうかの判断にあたっては、行為の目的(業務上の必要性の有無)と、行為の態様(社会通念上相当な範囲であったかどうか)を考慮する必要があります。業務上必要性があったとしても、言葉遣いや態度によっては、パワハラに該当することがあることを十分に認識する必要があります。
四 実際の例では、パワハラに該当するかどうか、悩む事例があると思いますが、会社側で判断する前に弁護士に相談されることをお勧めします。