ONE POINT ADVICE

経営ワンポイントアドバイス

売上低迷時に有効な
3つの視点(ドメイン・3C・視座)

中小企業診断士
キャリアコンサルタント

尾﨑 樹里子 氏

 長野県よろず支援拠点のコーディネーターとして中小企業の経営者の方々とお話をする中で、特に多い相談が「売上が伸びない」「赤字から抜け出せない」という悩みです。今回は、そうした時に何から見直せばよいのか整理してみたいと思います。

1. まず確認したいのは「会社の原点(歴史 と強み)」

 売上が伸び悩む原因を探る前に、まず確認したいのは「会社の歴史」です。創業の原点に立ち返り、創業者は、どんな思いで起業し、どんなお客様に、どんな価値を届けようとしていたのか振り返ってみます。10年、20年と続く会社には、必ず困難を乗り越えてきた経験と強みがあります。技術やサービスだけではなく、「あの時、こうやって乗り越えた」という知恵や判断も含まれます。会社の歴史を振り返ることで、「本来の強み」や「価値」が見えてきます。

2. 改めて「ドメイン(事業の領域)」 を確認する

 次に確認したいのが、自社のドメインです。ドメイン(事業領域)とは、自社の事業活動の範囲や領域のことで、「標的顧客(ターゲット顧客)」、「顧客ニーズ」=(お客様の求めている要求、困りごと)、「自社の能力」=(自社の製品、サービス、技術など)の3つから構成されます。
事業が好調だった時には3つがうまくかみ合い、「お客様のニーズ」を、「自社の製品・サービス」が満たしていたのです。ところが今は、そのバランスが崩れている可能性があります。

3. 「3C」分析で、自社だけの提供価値を確かめる

 次に、外部環境を3C分析で整理してみます。これは、表の3つのC、Company(自社)、Customer(顧客)、競合(Competitor)の視点でビジネスの状況を確認し、自社だけが提供できる価値(バリュープロポジション)を明確にする分析です。
 この3つの視点を見直すと、次のようなことに気づくことがあります。
・顧客のニーズが変わってきている
・ 競合他社が新しい技術やサービスを打ち出している
・ 自社の商品や対応が、今の市場に合っていない、あるいは強みが他社に埋もれてしまっている
まさに、市場は生きているのです。

4.視点を変える〝鳥の目・魚の目・虫の目〟

 鳥の目、魚の目、虫の目という言葉があります。経営者の視点の在り方を示したものです。
 この3つの視点をバランスよく持つことで、「今、自社に何が起きているのか」「どこにチャンスとリスクがあるのか」が見えてきます。

5. 見えないズレに気づくことが再出発の第一歩

 売上が上がらないときは、すぐに「新商品を作ろう」「広告を出そう」と対策を打ちたくなります。でも、まずは自社の本来の価値や立ち位置が今の市場でズレていないか、じっくり見直すことが、もう一度売上を伸ばすための「再スタート」のきっかけになります。

(商工連ながの 2025.11 Vol.402 掲載)
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