株式会社軽井沢観光ホテル
つるや旅館

取締役 佐藤 守 さん

軽井沢商工会

 皆さん、こんにちは。株式会社軽井沢観光ホテルの佐藤守と申します。
 私の家業は、軽井沢のつるや旅館という、創業400年の老舗旅館です。私の代で19代目となります。
 つるや旅館は、江戸時代初期に、中山道の宿場町軽井沢宿の休泊茶屋、旅籠鶴屋として開業しました。明治に入り、宣教師たちの軽井沢への往来が始まると、旅館業に転じ、日本風の建物のまま、西洋風な雰囲気を取り入れました。その後、大正には、芥川龍之介、室生犀星、堀辰雄ら、多くの文人たちが泊まられました。

 クラシック音楽が流れるロビーでは、本や新聞を読みながら、ゆったりとおくつろぎいただけます。心地のよい光が入ってくる窓からは、旧軽井沢の空気を感じる自然が臨めます。本館と別館を隔てる中庭は、堀辰雄の小説「美しい村」に登場する場所で、水の流れの音を聞きながらたたずんでいると、物語の中にとけ込んでいく気分になります。
 部屋は、本館・別館・奥館と3棟合計で25部屋あり、時を重ねた客室は昔懐かしい空気が漂っています。
 食事は朝食と夕食を提供しており、朝食はバイキングで、軽井沢の新鮮な野菜や旧軽井沢銀座通りの老舗ソーセージ屋さんのハムとソーセージ、老舗パン屋さんのパン、自家製ジャムとヨーグルト、他にも日替わりでたくさんのお料理をご用意しております。夕食は昔ながらの和食に少し創作を加えたコース料理で、信州の和牛や軽井沢の新鮮な野菜、豊洲から仕入れた魚を使ったお料理を1品1品テーブルにお持ちいたします。
 江戸時代から幾度かの改装を重ねながら、軽井沢の昔を今につなぐ老舗旅館として、歴史を守り続けてきました。
 そんな中、今までに経験したことがない出来事がありました。2020年の春の新型コロナウイルス感染症の流行です。
 あの時、軽井沢町からは、人の姿が消え、つるや旅館も営業自粛要請を受けました。町に出てみると、小鳥の声、川のせせらぎ、風の音しか聞こえない状況でした。つるや旅館のロビーが真っ暗の中、私はフロントカウンターに一人で座り、何もできない時間をもんもんと過ごしていました。

 ある日、商工会青年部の先輩から「YouTubeをやってみたら?」とアドバイスをもらい、何もしないよりはと思い、動画投稿を始めることにしました。
 軽井沢の新緑が一年で最も美しい5月下旬。つるや旅館の玄関先で、初めての撮影を行いました。慣れない撮影に戸惑い、ただ歩きながら目に映る風景を紹介するだけの内容でした。
 しかし、その動画をYouTubeで公開すると予想以上の反響がありました。
 最初は知り合いから「見たよ」と声をかけてくれる程度でしたが、ある日ふと再生回数を確認すると1万回を超え、気づけばその動画は17万回以上も再生されていました。
 そして、YouTubeからつるや旅館に関心を持っていただいた方から、実際に問い合わせや宿泊予約をいただくなどの効果があり、コロナ禍の影響による営業自粛の中から始めた活動でしたが、新しいお客様の獲得につながりました。
 これをきっかけに、「軽井沢に行った気分になれる」をコンセプトに、毎週金曜日の夜7時に配信するようになりました。

 今では、YouTubeに投稿した動画は250本、総再生回数は500万回以上に達しました。最近は「食レポ」も加え、軽井沢町内のお店を紹介する動画も投稿しています。
 江戸時代から続くつるや旅館。現在、技術の進歩による新しい価値やトレンドが日々生まれる中、それらを取り入れながら軽井沢の昔を今につなぐ老舗旅館として、次世代につなげていきたいと思います。

株式会社軽井沢観光ホテル
つるや旅館

住所/〒389-0603 長野県北佐久郡軽井沢町旧軽井沢678
TEL/0267-42-5555
URL/https://www.tsuruyaryokan.jp
Youtube URL/https://www.youtube.com/@tsuruya_ryokan

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(商工連ながの 2025.11 Vol.402 掲載)
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